2023年12月1日より、インド最高峰の大学群「インド工科大学(Indian Institutes of Technology)」(以後:IIT)の採用面接会である、「IITプレースメント」が実施されました。IITは、Old IITと括られる7校と、New IITと括られる16校を合わせた23校で成り立つ大学群です。
ASIA to JAPANは、長年23校全てのIITと関係値を築いており、毎年行われるIITプレースメントへの日本企業参加の支援を行っています。
先日行われた2023年のIITプレースメントでは、昨年の最高136名を上回る合計154名の採用支援を実現しました。
※インドルピー:Rs もしくは INRで表記
プレースメントとは
「IT」「通信」「メーカー」「自動車」などを中心とした世界的大手企業では、インド最高峰の大学群であるインド工科大学(IIT)の卒業生が世界トップレベルのエンジニアとして活躍をしています。
プレースメントとは、そのIITの優秀な人材に対して指定された期限内で、採用を行う面接会のことを指します。IIT学生の採用は、常に行えるものではなく、12月に大学が主催する面接会「プレースメント」への参加が必要です。そのため、期間外でのヘットハンティングなどを行うこともできないのです。2023年度は、昨年に引き続きオンラインとオフラインの両方式で実施されました。
※プレースメントについて詳しくはこちら
2023年は日本企業が選考に有利なスロットを獲得!
2023年のIITプレースメントは、ASIA to JAPANが支援した日本企業のほとんどが、選考に有利なスロットを獲得することができました。
プレースメントでは、各企業がIITに対して学生を採用する際の条件を、独自のポイントに置き換え、そのポイントが高い企業から順番で選考に有利なスロットに割り振られます。
今回支援を行った日本企業は、前年度と同等の条件を提示しましたが、有利なスロットを獲得しています。
その理由が、昨年と同様に欧米諸国の景気が低迷している関係で、採用を自国内に絞る傾向があり、外国人材の枠が減少していることがあげられます。
結果、2023年度のプレースメントへの参加を控える欧米企業が多く、日本の企業は繰り上がりのように、良いスロットを得ることができました。
昨年を超える154名の採用支援を達成!
ASIA to JAPANは、参加した日本企業に対し合計154名の採用支援に成功しました。昨年の最高人数136名を上回る結果となったのは、2つの要因があります。
・ASIA to JAPANとIIT全23校との関係値
・日本企業の採用枠拡大
ASIA to JAPANは、日頃からIIT全23校に対してオンラインだけでなく、実際に大学へ訪問することで、良好な関係値を築いてきました。そのため、IIT側は学生を日本企業へ安心して送り出すことができるようになり、IIT側からも、学生のために日本企業の紹介や誘致を依頼されるなど、前向きなアプローチをいただきました。
また、支援先の日本企業が、IITの学生の実力を理解した上で採用枠を拡大したことも、今回の採用支援結果に繋がりました。
3つの支援ポイント
昨年と同様になりますが、日本企業がIITプレースメントで採用を勝ち取るためには、採用の戦略を練り、参加することが大切です。採用条件や提示年収が、スロットの振り分けや、採用の結果に直結します。特に人気がある「Old IIT」では、優秀な人材を求める世界の名だたる企業と競わなければなりません。一般的な日本企業が提示する条件だけでは、戦いきれないというのが現実です。
そのため、ASIA to JAPANは次の3つのポイントを持って、日本企業への支援を行いました。
- 長年培ったプレースメントのノウハウ
- IIT全23校へのヒアリングで得た傾向と対策
- New IITの早期プレースメントへの積極的参加
ASIA to JAPANは、2023年よりNew IIT9校に対して、プレースメントよりも早い11月に「JAPAN DAY」を実施しました。
結果、支援を行った日本企業の全社で、内定を獲得することができました。
お知らせ:2023年のIITプレースメント速報セミナーを開催します!
2023年11月に早期開催されたNew IITでの採用から12月の主要校でのプレースメントまで結果と傾向をお伝えするとともに、前年との違いを踏まえ、2024年のプレースメントに向けた対策を公開します。
是非ご興味のある方は、以下の「お申込みはこちら」のURLからお申込みください!
『インド工科大学の採用・最新情報! IITプレースメント(面接会)2023 結果速報&トレンド解説セミナー』
日時:2024年1月23日(火)12:00〜13:00
会場:オンライン(Zoom)
費用:参加費無料
定員:100名
お申込みはこちら:
https://asiatojapan.com/jgs/seminars-and-events/seminars/iit-news-2024/
トークテーマ:
1)2023年IIT採用の振り返り(応募状況、選考歩留り、内定承諾状況など全体結果の報告)
2)オンラインとオフラインの割合と効果・影響について
3)GAFAMなど有力企業の参加状況を含めた競争環境について
4)2024年プレースメントの環境予測と対策
5)IIT以外のインド各大学の状況について
登壇:ASIA to JAPAN 代表取締役 三瓶 雅人
「ASIA to JAPAN」は貴重な相談窓口
ASIA to JAPANは、日本企業への就職支援や、大学訪問から意見交換を行うなど、長年かけてIIT全23校と良好なネットワークを築き上げてきました。その結果、日本企業について相談を行うなら”ASIA to JAPAN”と、IITの貴重な相談窓口的な存在として確立することができました。また、日本国内では唯一「IITと深い関係が構築できている日本企業である」と、認識されています。
その結果、IIT FAST OFFER JAPAN DAYという、他では真似することができない、早期面接会を設けることもできました。
通常のプレースメントは、企業が出した採用条件をもとに、IITが面接のスロット(日程)を決めるなど、IITが全権を握るスタイルです。しかし、JAPAN DAYは、ASIA to JAPANが日本企業とIITの間を調整し、日本企業が希望する時間で面接ができるスタイルです。これは、長年の関係と今までの採用支援実績が可能にしました。
過去の採用実績が少ない、また初めてプレースメントに参加をする企業は、採用ルールや方針が異なる国での採用に困難を極め、企業の負担が重くのし掛かるでしょう。しかし、諦める前に一度、ASIA to JAPANにご相談ください。
日本企業とIITの架け橋になれるよう、ASIA to JAPANは今後もIITとの関係性を強化していきます。
IITプレースメント速報(2023年)
2023年のプレースメントで注目すべきオファーを速報でお知らせします。
速報① New IIT ルールキー校が過去最高額オファーを更新
2022年度は、過去最高年収の6,000万円というオファーが提示されました。本年もその流れが続くかと思われましたが、前述した通り欧米諸国の経済が低迷していることもあり、最高年収オファーは3,500万円でした。
この最高オファーを提示されたのが「IIT ルールキー校」で、同校として過去最高オファー額を更新することになりました。提示した企業は、アメリカのソフトウェア企業「Databricks」です。
Old IITでも特にボンベイ校やマドラス校に注目が行きがちなプレースメントですが、IIT全体として企業の戦力となりうる優秀な人材がいることが、改めてわかる結果となりました。
速報② 内定獲得者数が減少
今回のプレースメントで内定を獲得した学生の数は、前年と比べて15%~30%減少しているとのことです。企業が注目視する「コンピュータ サイエンス エンジニアリング」の学生の一部でさえ、1週間以上も就職できていないという異例の状態となりました。主な要因として、国外企業の採用枠が減少していることがあげられます。
速報③ 就職先として日本企業の人気が増大!
今回のプレースメントでは、IITの学生の動向に興味深い所がありました。欧米の企業から多数のオファーが届くプレースメントですが、今年は欧州からの参加企業が少なかったということもあり、開催直前で学生の多くが日本への就職に興味を示したのです。そのため今回は、日本企業にとって優秀な人材に出会い、採用できる確率が例年に比べて高かったと言えるでしょう。
Old IITのプレースメント速報(2023年)
IITの中でも最難関といわれる、Old IITにはインドの最優秀層が集まるため、プレースメントには世界の名だたる企業が参加します。プレースメントは、オファー金額で採用結果がほぼ決まると言っても過言ではありません。そのため、優秀な学生を獲得するためのオファー金額も、必然的に積み上がります。
※「Old IIT」「New IIT」の括りについてはこちらをご覧ください
2023年のOld IIT各校のオファー年収や傾向についてまとめました。
IITマドラス
マドラス校では、全学生の50%がオファーの提示を受けました。そのうち、前年と比較してインターンシップからのオファーが19%増加しました。オファー金額の中央値は、 年収190万INRでした。オファー提示を行った企業には、JPモルガン・チェース、テキサス・インスツルメンツ、アドビなどがあがっています。
IITデリー
今年は360以上の国内外の組織が、デリー校でのプレースメントに参加しました。参加企業は、主にマイクロソフト、ゴールドマン サックス、テキサス インスツルメンツなどでした。関係者によると、マイクロソフトは18人の学生を採用したと言います。これは、昨年の採用人数を大幅に超えることになりました。今回オンラインとオフラインの両方の採用が行われたことについて、キャリアサービス局の担当教授、R・アヨティラマン氏は声明で次のように述べています。「私たちは、学生団体のニーズや願望に応えるため、さまざまな分野の企業を適切に組み合わせ、ラインナップしています」。またデリー校は、免責事項の中で、高額パッケージについては言及しないことが決まりました。
IITボンベイ
ボンベイ校では、4 人の学生が韓国のサムスンから数千万INR以上のオファーを獲得しました。さらに、アメリカの大手半導体メーカーのクアルコムが 、20人以上の学生に対してオファーを提示しています。電気通信専攻では、600万INRから800万INRの範囲でオファーが行われました。しかし、今回の結果に対して学生は、「今年は数千万INR以上のオファーが減っています」と語っています。
IITカンプール
カンプール校は、合計891件のオファーの提示を受けました。そのうち、21 人の学生が海外の企業からオファーを受けとっています。初日のトップ採用企業には、マイクロソフト、テキサス・インスツルメンツ、ドイツ銀行、クアルコムが含まれていました。
IITカラグプル
カラグプル校では、 1 日目のインド国外からのオファーが19件でした。1日目が終了した時点でのオファーの合計は771件で、昨年の761件を上回りました。主な業種は、アナリティクス、金融銀行、コンサルティング、コア エンジニアリング などで、アップル、ダ・ヴィンチ、キャピタル・ワン、グーグル、マイクロソフト、TSM、その他多くの企業が参加しました。そのうち61社以上の企業が、主にソフトウェアの分野でのオファーを提示しています。国外からのオファーを19 件以上受けた学生の中には 、プレースメント初日に 1千万INR以上のCTC※を獲得した学生がいます。
カラグプルの所長であるヴィレンドラ・クマール・テワリ教授は、「現在の就職シーズンが低迷しているにもかかわらず、IITカラグプルが就職活動の初日に700件以上のオファーを手にしたこと自体が、質の高い人材を輩出し、優れた教育を提供していることの証しです」と述べられています。
※CTCについてはこちらをご覧ください
IITルールキー
ルールキー校では、米国に本拠を置く大手ソフトウェア会社 Databricks から2,050万INRのオファーを獲得しました。今回Databricksは、ルールキー校から1名だけ採用しましたが、提示したオファー額がルールキー校にとって過去最高額となりました。また、別で3名の学生が国際的なオファーを集めています。今回オファーを提示した企業には、バークレイズ、アクセンチュア、サムスンセミコンダクター、シュルンベルジェソフトウェア、クアルコムなどが含まれます。
IITグワーハーティー
グワーハーティー校では、1千万INRを超えるオファーが前年度の7件から増え、約11件ありました。また、約60社が約165件のオファーを出していました。これも、昨年に比べてわずかに増加しています。そして今年は、214件のPPO※を記録しました。
※PPOについてはこちらをご覧ください
New IITの優秀な学生と出会える「JAPAN DAY」
「New IITは、優秀な学生が眠る穴場である」
プレースメントに参加をする、多くの企業が注目するのがOld IITと言われる7校です。IITの中でも設立年が古い学校がOld IITと呼ばれ人気を誇り、IITの中でも特に狭き門と言われています。そのため、特に優秀な人材が集まっていると言えるでしょう。そのため、Old IITに通う学生に対して、多くの企業がオファーを提示し、競い合わなくてはなりません。もちろん好条件の企業から優先的に採用を行うので、採用を行うのは困難を極めます。
しかし、IITは全部で23校あります。Old IITに属さない、比較的新しく設立した16校は、Oldよりも劣った学生しかいないのかというと、答えは「否」です。
IITは、成績優秀者から順に希望する大学に入学していきます。そのため、人気のある学部(特にIT系)は、すぐに埋まる傾向にあるのです。
成績上位の学生でも、Old内のIT関連の学部が埋まっている場合、大学の名前よりも学部を優先して選ぶため、New IITのIT関連の学部を選択します。
これは、日本の学生と考え方が違うところになります。
※詳しくはこちらをご覧ください
知らなきゃ損な「New IIT」
繰り返しになりますが、Old IITには優秀な学生が集まっていることを、世界中の企業が知っているため、プレースメントでは激戦を繰り広げることになります。
一方の、New IITはOld IITに比べてあまり注目されない傾向にあります。しかし、前述した通り、多くの上位成績者も学部を求めNew IITに通っています。
Old IITに通えるだけの優秀な学生を、低い倍率の中で獲得を可能にする事が、New IITを穴場と言える所以です。
プレースメントの参加を検討する企業は、改めて求めている人材について見直してみると良いかもしれません。
Old IITのネームバリューに注目をし、渡航費や人件費をかけ、半ば賭けのような競争をすることに、費用対効果はあるのでしょうか。
IIT FAST OFFER JAPAN DAY
2023年11月にASIA to JAPANでは、「IIT FAST OFFER JAPAN DAY(以後:JAPAN DAY)」というNew IITの9校の学生を対象にした面接会をオンラインにて実施しました。
前述している通り、12月のプレースメント以前に、IIT全23校に対して採用活動を行なう事ができません。しかし、ASIA to JAPANは、築き上げてきた関係値から、早期面接会を実施する機会を得る事ができました。
面接の流れは、プレースメントに似ています。しかし、スロットや面接を行うタイミングについては、日本企業の都合に合わせる事ができます。また、参加者は日本での就職を望む学生のみとなるため、内定承諾率が95%と、通常のプレースメントに比べ、企業側の採用の見通しがつきやすいメリットがあります。
対象の9校
2023年のJAPAN DAYに参加したNew IITは、次の9校になります。
・IIT ビラーイー校
・IIT ブバネシュワール校
・IIT ダルワド校
・IIT ガンディナガル校
・IIT ゴア校
・IIT ジャンムー校
・IIT ジョードプル校
・IIT マンディ校
・IIT パルカード校
・IIT パトナ校
・IIT ロパール校
・IIT ティルパティ校
来年度のIITプレースメントは欧米企業の採用が戻れば、競争激化すると予想
2023年のIITプレースメントの振り返りをお伝えしました。
今年は、欧米企業の採用枠減少の影響で、プレースメントの動きが鈍化しました。その影響が日本企業にとってプラスとなり、早期日程やスロットの確保など、例年と比べて採用条件が有利になりました。
2024年も、欧米経済の影響を大きく受けると予想しています。もし、例年通りの採用枠に戻れば、日本企業にとってIITの人材を確保することは難しくなるでしょう。
また、世界的企業の採用が鈍化した状況を鑑みて、新規で採用活動を始める企業も増えるでしょう。
そのため、今一度必要な人材がOld IITにしかいないのかどうか、検討することをお勧めします。
IIT学生の採用でお困りの方は、ASIA to JAPANに気兼ねなくお問い合わせください。
引き続き、IITとは年間を通したオンラインでのやり取りはもちろん、継続的な現地訪問も行い関係強化に努めます。
【参考記事】
・The Times of India「IIT placements 2023: From crore-plus offers to international success, campuses witness variety of achievements」
・CollegeDekho「IIT Placements 2023-24 Day 1 and 2: Top recruiters, highest salary details」
・The Economic Times「Trading firms & global investment managers make lucrative crore-plus offers to onboard top tech talent at IITs」