【お話を伺った方】
株式会社オープンアップコンストラクション 代表取締役社長 保苅 浩史さん
【採用メリット】
- 全国転勤可能な理系人材が採用できる
- 大学で建築や土木を学んでおり、仕事への意欲が高い
- 離職率が低く、現場への定着率が高い
- 会社全体のダイバーシティを進められる
過去うまくいかなかった外国人材採用を再開した理由
外国人材採用を始めるにあたって、どのような採用課題があったのでしょうか。
日本の生産年齢人口不足、そして建設業の若手の就労人口不足が大きく影響し、国内の新卒採用は年々難しくなっています。
以前は200人超の新卒採用をしていましたが、2023年と2024年はそれを下回る結果となるなど、特にコロナ禍以降オンラインで仕事ができるようになる中、現場に出る建設業界の人手不足はより深刻になったように感じます。
加えて質の問題も深刻です。理系学生が減っている現状もあり、新卒採用者は文系が大多数を占めるようになり、かつ転居を希望しないという学生も増えています。全国転勤が可能な理系人材はごくわずかです。
そのような中、優秀な人材を獲得する新しい打ち手の一つが外国人材採用でした。
外国人材の採用に着目した背景を教えてください。
グループ内で外国人材採用の提案を受けたのがきっかけです。
実は当社でも、過去にネパールや韓国、中国、マレーシアの人材を採用したことがありました。ただ、当時は業界として早過ぎたのか、なかなか採用した外国人材をお客さまから受け入れてもらうことができずにいました。
また、1年未満の早期退職や、2〜3年たってようやく戦力になるというタイミングで母国に帰ってしまうケースも多く、正直に言えば、外国人材に対してあまり良い印象を持っていなかったのです。
そういう意味で外国人材採用の再開は結構なチャレンジだったのですが、視察のためミャンマーに出向いたところ、学生たちのやる気や真剣な眼差しに心を打たれてしまって。ポジティブに頑張ってくれそうだという印象を受け、採用に前向きになれたと思います。
過去に採用した外国人材と何が違ったのでしょうか?
一番は国の情勢だと思います。ミャンマーは貧困率が高く、軍事政権下で内戦もあり、親にも「子どもを国外に出したい」という思いがあるように感じます。学生本人からも「チャンスを掴みに行く」という必死さのようなものがありますね。
また、ミャンマーに次いでインドでも採用を始めましたが、インドでは比較的レベルの高い大学でしっかり土木や建築の勉強をした学生でも、最初の年収は70〜80万円程度。当社の場合は1年目から年収300〜400万円はもらえ福利厚生や資格取得のサポートなども充実しているので、そこが日本に来たいという意欲につながっているように思います。

「外国人材が好まれることも多い」
現在はどのくらい外国人材を採用していますか?
主にミャンマーとインドの2カ国で採用を行い、2024年3月にミャンマーから5名、2024年10月と2025年1月に合計50名が入社しています。他に入社を控えたミャンマー人内定者が約50名いる状況です。
採用のため現地の大学を訪問し、説明会を行っているのですが、日本と反響は全く違います。
日本では建設業界自体に人気があるとは言えない状況であり、当社でも応募してくれた人に対し、まず魅力を訴求する必要があります。ミャンマーの説明会でも100名中5〜10名が関心を示してくれたらいい方だと思っていたのですが、実際には数えきれないほど質問の手が上がりました。
今では面接中に「先輩が働いています」と言ってくれる学生も出てきています。私や役員が現地に面接へ行くなど、トップが直接採用していることもプラスに働いているようです。
採用した外国人材の皆さんの印象を教えてください。
本当に一生懸命やってくれています。懸念していた退職もありません。
たとえ辞めなかったとしても、当社は派遣事業ですからお客さまからの評価が悪ければ契約が更新されず、本社に戻ってくるのですが、その割合も極めて低いです。
お客さまにとって戦力になっているのはもちろん、頑張る姿を評価してもらっているのだと理解しています。業務への姿勢だけでなく、誰よりも早く現場に顔を出したり、しっかりあいさつをしたりと、そういったところがかわいがられているのでしょうね。
以前の外国人材の受け入れ時と教育の仕方などを変えたわけではないので、ミャンマーの社員が優秀で礼儀正しいということに尽きると思います。お国柄が大きい気がしますね。
過去には「外国人材が派遣先から受け入れられない」という課題もありました。その点はどのようにクリアしたのでしょうか。
特別なことはしていません。業界の緊迫感はどの会社でも感じていることであり、そういった社会の変化が影響していると思います。
過去には未経験や文系人材の受け入れに難色を示すお客さまも多かったようですが、今はほとんどのお客さまが受け入れています。同じようなことが外国人材にも起きているのかもしれません。
また、派遣会社はどれだけ良い人材を抱えていたとしても、担当営業次第でお客さまからの評価は変わります。逆に言えば、信頼関係があれば外国人材でも紹介できると思っています。
当社の営業メンバー内で外国人材をお客さまに紹介する方法論も確立されつつあり、最近では「ミャンマー人の方が好まれている」とも聞いています。継続率や現場からの評価を考えた時に、ミャンマー人をお勧めできる理由はたくさんあります。
特に日本人が定着しづらい土木系のお客さまに対し、ミャンマー人の特徴や適性を具体的にお伝えすることが多いです。
土木系の案件は夜勤もあり、日本人が敬遠することが多いのですが、ミャンマー人の社員は大学で学んだことを生かしたいと、非常に前向きに取り組んでくれています。
全国転勤ができる前提で採用しているので、現場の変更にも柔軟に対応でき、お客さまにとっても適材適所で生かしやすい人材だと思いますね。

外国人材が活躍できる環境づくりは会社の責務
外国人材を受け入れるにあたって、特別にしていることはありますか?
仕事面では特にありません。一定の日本語力があり、大学で建設や土木の勉強をした人材を採用しているので、文系未経験の日本人より独り立ちは早いです。また、人生をかけて日本に来ている分、仕事にも意欲的です。
文化や習慣の違いをフォローする意味で生活面の支援は必要ですが、思った以上に手はかかりません。
結果的に、給料も日本人より外国人材の方が高いんですよ。日本人と外国人で給与体系や条件は同じですが、外国人材は理系かつ全国転勤が可能なので、必然的に一番高い給料になります。
今後の目標や展望について教えてください。
さらに外国人材採用に注力し、成長していきたいと思っています。まずはミャンマーとインドを中心に、毎年1.5〜2倍規模で人数を拡大する予定です。
現在はインドの大学と提携し、本格的に採用を進めようとしているところです。正直、インド人は早期退職のイメージがあり、建設業界でインド人が施工管理を担う事例もあまり聞かなかったのですが、やはり現地へ赴いたことで印象は大きく変わりました。
働くことに飢えている学生が一定数いて、「日本で働けるのはとても大きなチャンス」と思ってもらえている。実際に応募も殺到し、合計で200人以上の母集団が形成できている状況です。
他に、入社後の生活支援を強化するための専門部署を立ち上げました。まずは日本で施工管理の経験があるミャンマー人を採用し、営業に言いにくいことを気軽に相談できる体制を整えています。ゆくゆくはキャリア支援まで行う部署にしたいですね。
会社として外国人材を受け入れる意義は何だと思いますか?
ダイバーシティの観点でいうと、外国人材が活躍できる環境づくりは会社としての責務であり、人的資本経営の流れから考えても外国人材を積極採用するのはプラスです。
ミャンマーには日本で働きたいという希望に加え、当社で頑張っている先輩社員の姿を見て「オープンアップコンストラクションに入りたい」と思ってくれている学生がたくさんいます。その期待に応えるためにも、外国人材から選ばれる会社をつくっていきたいですね。
