日本語能力試験(JLPT)N1の難易度とは?合格率についても解説!
外国人採用をする際に気になる項目の1つに挙げられる、外国人材の日本語力。
人事担当者として日本語力の目安となる資格に「日本語能力試験」が挙げられると思います。この記事では、1番難易度の高い「N1」について、そのレベル感や合格率について解説します。
日本語能力試験(JLPT)とは?
日本語能力試験(JLPT: Japanese-Language Proficiency Test)とは、日本語を母語としない人の日本語レベルを測定するための試験です。7月と12月の年2回開催されており、課題遂行のための言語コミュニケーション能力を測定することが目的とされています。日本語の文字・語彙・文法についての知識があるだけではなく、それらを利用していかにコミュニケーション上の課題を遂行できるかという点を重視しています。
(参考サイト:「日本語能力試験とは 4つの特徴」日本語能力試験JLPT )
日本語能力試験の5段階レベル
日本語能力試験には、5つのレベルがあります。これらはN1、N2、N3、N4、N5に分かれており、N1が最も難しく、N5が易しいとされています。具体的な目安は以下の通りです。
N1: 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2: 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3: 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4: 基本的な日本語を理解することができる
N5: 基本的な日本語をある程度理解することができる
N4とN5では、教室で学ぶ基本的な日本語に対する理解度を測り、N1とN2では、現実の幅広い場面で使用される日本語に対する理解力を測ります。N3は、それらの橋渡しというポジションとして存在しています。
これらを踏まえ、N2以上があれば、仕事におけるコミュニケーションがスムーズにできるという声もあり、N2を採用基準にしている企業も多いようです。
(参考サイト:「日本語能力試験とは N1~N5:認定の目安」日本語能力試験JLPT )
試験概要
どのレベルにおいても、言語知識(文字・語彙・文法)・読解・聴解に分かれており、全てマークシート形式で実施されます。2022年12月回から、N1の聴解が60分から55分に変更されました。
各レベルの試験科目(引用:日本語能力試験のHP)
日本語検定との違い
日本語の試験には、日本語能力試験と日本語検定というものがありますが、これらは異なる目的を持った別の試験です。日本語能力試験は、「日本語を母語としない人たちの日本語能力を測定し認定する試験」とされています。一方、日本語検定は「日本語を使うすべての人のための検定」です。勘違いや思い違いをなくし、より正しい日本語を使用するための手立てになると定められています。
受験者数のデータ
日本語能力試験には1984年から始まった歴史があり、2018年(平成30年)には100万人以上の受験者数を記録しました。
2023年(令和5年)7月の最新データでは、55の国や地域で実施され、受験者数は602,140人でした。受験者数に対する認定者(合格者)数は、251,030人(41.7%)でした。毎年、認定者数は40%前後だという統計データがあります。
以下が過去5年間と本年度7月の受験者数をまとめたものです。2018年に100万人を記録してから受験者数は増加していましたが、2020年には新型コロナウイルスの影響で7月の試験が実施されなかったこともあり、受験者数が減少しました。その後も、各実施回の受験者数はコロナ禍以前と比較して減少していましたが、本年度の7月はコロナ禍以前と同等の人数に回復しているようです。12月の受験者数によっては、過去最大の総受験者数を記録するかもしれません。
過去5年の受験者数データ(引用:日本語能力試験のHP)
レベル別の受験者数
過去5年のレベル別受験者データ(引用:日本語能力試験のHP)
レベル別の受験者数の推移をみてみると、例年N2の受験者が多いことが分かります。以前はN3が次いで多かったようですが、近年ではN1の割合が増加していることが分かります。
N1の難易度とは?
では、一番難しいとされるN1ですが、実際にはどのくらいの難易度なのでしょうか。合格率や必要な能力について詳しくみていきます。
N1の合格点と正答率
試験に合格するためには、「総合的な合格点」と「各得点区分における基準点」の二つを満たす必要があります。N1における合格点は180点満点中100点で、言語知識・読解・聴解のそれぞれにおいて19点の基準点をクリアしなくてはなりません。また、総合的な合格点のみを見た場合、合格のための正答率は56%です。
N1の合格率
N1~N5までの総受験者数は2023年(令和5年)において602,140人でしたが、そのうち、120,407人がN1の受験者でした。受験者のうち、認定者(合格者)数は、40,975人で合格率は34.0%でした。
過去5年のN1受験者数データ(引用:日本語能力試験のHP)
過去5年間の推移から、N1受験者数の合格率は例年およそ30%であることが読み取れます。2020年のみ、合格率は約45%と比較的高い結果を残しましたが、平均で30%ほどの合格率であるといえます。3人に一人しか受からないレベルなので、N1は難易度が高いといえます。このように、N1レベルの試験は、日本人が受験しても、満点が取りづらいと言われるほど、日本語の知識と集中力が求められます。
N1に必要な能力
では、具体的にN1を取得するために必要とされる能力はどのように定められているのでしょうか。日本語能力試験の公式サイトには以下のように表記されています。
読む
・幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる
・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる
聞く
・幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる
この基準から、単純な日常会話だけではなく、より深みのある複雑な日本語に対する理解が必要であると伺えます。
N1の捉え方についての注意点
漢字圏出身者は合格しやすい
弊社ASIA to JAPANが2023年7月に実施した「日本で就業中の外国人材」171名に対して行ったアンケートを見ていきましょう。
以下は、「日本企業に入社する前に日本語を勉強したか」という質問の結果を東アジア(中国、台湾、香港、韓国、モンゴル)とそれ以外の地域に分けて集計したグラフです。
その他の地域では、N1〜N5の全てのレベルにおいて学校で日本語を学んだ人の割合が6〜8割になるのに対し、東アジアではN3取得者のうち、学校で日本語を学んだ人はゼロという結果になりました。
JLPTは日本語が分からなくても漢字さえ知っていれば点数が取れてしまう面があり、漢字圏である東アジア出身者は比較的取得が容易です。N4、N5取得者がいないのもJLPTをN3から受けていることが背景にあり、腰を据えて日本語を勉強しなければJLPTを取得できない他の地域とは、そもそもの日本語学習のスタートラインが異なります。つまり、東アジアとその他の地域では日本語の習得難易度に歴然とした差があると言えます。同じN3であっても、東アジア出身者とその他地域出身者で取得難易度は別物であることを企業は認識しておきたいです。
外国人材採用と一括りにするのではなく、出身国も加味した上で日本語要件を設定しなければ、東アジア以外の地域の出身者の採用が難しくなってしまうことを知る必要があります。
入社前の日本語学習の重要性
また前述したアンケートでは、半数以上が「企業から日本語学習の機会を与えられている」と回答しており、その約7割が「仕事および生活に役に立った」と評価しています。実際にアンケート回答者からは、「日本語ができると周りの人に質問がしやすくなり、仕事だけでなく生活にも慣れやすいと思う」「上司の指示を適切に聞き取り理解できないと迷惑がかかってしまうと感じる」といった声があり、日本語力が入社後の立ち上がりに影響することが見て取れます。
回答者からは「事前に求められる日本語レベルを知っておきたかった」というニーズも寄せられました。
アンケート回答者の声
外国人材にとっても、必要とされる日本語力を踏まえた上で、そこに向けて準備をしたい思いがあるのが伝わります。
(詳細記事はこちら:【171名に聞いた!日本で働く外国人材へのアンケート結果】外国人材の日本語力について)
まとめ
N1の合格率は3割ほどであり、合格するのは容易ではないと理解いただけたと思います。それだけ、N1の認定者は優秀であり、活躍できる可能性が十分にある人材だということです。
しかし、JLPTの捉え方には注意すべき点があり、JLPTのみを基準として採用することは避けるべきでしょう。面接を通じて、他の能力と照らし合わせた総合的な判断をすることが重要なのではないでしょうか。
ASIA to JAPANに相談
ASIA to JAPAN では、高度外国人材の採用をサポートしています。日本語が話せる優秀な学生と東京で出会える『FAST OFFER』を毎月開催しており、採用に関するノウハウを持っています。日本語の話せる外国人人材の採用に興味があるけどなにから始めていいか分からない!という方は、お気軽にお問合せください。