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【171名に聞いた!日本で働く外国人材へのアンケート結果】外国人材の日本語力について

目次

ASIA to JAPANでは、2023年7月に、現在日本に在住し日本で就業中の外国人材171名を対象にアンケートを実施しました。
回答者の男女比はおよそ半々、年代は約8割が20代で、全体の9割弱が海外の大学を卒業。新卒で日本企業に入社した人の割合は約8割となっています。

アンケート概要・回答者プロフィール

アンケート概要

外国人材の日本語力について 

外国人材にどの程度の日本語レベルを求めるか

外国人材採用に関して、多くの企業が抱く懸念事項の一つが外国人材の日本語力です。入社時に求める日本語力はどの程度が妥当なのか、アンケート結果から考えていきます。

まずアンケート回答者のうち、日本企業に入社する前に日本語を勉強した人の割合は、国内外の大学・大学院または日本語学校で学んだ人が
64%、独学で学習した人が30%と、合計で94%。ほとんどの人が入社前から日本語学習を開始しています。

外国人材の日本語レベルは、来日前はN335.7%と最も多いですが、来日後はN245%と、来日前のN2の割合の倍近くまで増えています。来日後に日本で生活する中で日本語力が伸びるのはもちろんですが、日本企業との面接時に目指すべきレベルがN3、入社までに目指すレベルがN2という、それぞれのフェーズで目安とされているレベルに準じた結果と考えられます。

企業としては、日本語で面接を受ける外国人材のJLPTのボリュームゾーンはN3であり、選考基準をN1,N2にすることで採用難易度が一気に上がることは知っておきたいポイントです。


また、
JLPTはペーパーテストであり、JLPTの結果と日本語会話のレベルが比例しないケースも当然あります。あくまで書類選考の基準となるものであり、実際の面接で「どのくらい話せるか」を確認し、採用の判断をするのが重要です。

仮に書類選考時にJLPTが選考基準を満たしていない場合であっても、志望動機や自己アピールの内容次第では面接に進めることを当社では推奨しています。というのも、JLPTは年2回しか受験のチャンスがなく、申し込み期間を含めると試験日の9カ月前に受験の意思決定をする必要があります。

そこから結果が出るのに1カ月程度かかるため、受けようと思ってから実際に取得するまでに1年近くかかってしまいます。つまり実際は日本語で面接ができるレベルであるにも関わらず、タイミングが合わずにN4,N5しか持っていないというケースもあり得るのです。 

JLPT以外に日本語力を判断する材料がなければ仕方がないですが、「日本語の勉強をこれだけやっている」「日本語でこういうことができる」といった内容が日本語で書いてあり、その内容に期待が持てるようであれば、面接をしてみるとチャンスは広がるでしょう。


出身国を漢字圏とそれ以外に分け、それぞれで日本語要件を変えることが重要

もう一つ重要なポイントは、外国人材の出身国を漢字圏とそれ以外に分け、それぞれで日本語要件を変えることです。
以下は「日本企業に入社する前に日本語を勉強したか」という質問の結果を東アジア(中国、台湾、香港、韓国、モンゴル)とそれ以外の地域に分けて集計したグラフですが、その他の地域では
N1〜N5の全てのレベルにおいて学校で日本語学んだ人の割合が6〜8割になるのに対し、東アジアではN3取得者のうち学校で日本語を学んだ人はゼロという結果になっています。

 

JLPTは日本語が分からなくても漢字さえ知っていれば点数が取れてしまう面があり、漢字圏である東アジア出身者は比較的取得が容易です。N4N5取得者がいないのもJLPTN3から受けていることが背景にあり、腰を据えて日本語を勉強しなければJLPTを取得できない他の地域とはそもそもの日本語学習のスタートラインが異なります。 

つまり、東アジアとその他の地域では日本語の習得難易度に歴然とした差があるのです。同じN3であっても、東アジア出身者とその他地域出身者で取得難易度は別物であることを企業は認識しておきたいポイントです。
外国人材採用と一括りにするのではなく、出身国も加味した上で日本語要件を設定しなければ、東アジア以外の地域の出身者の採用が難しくなってしまうことを知る必要があります。
 

なお入社後の日本語の伸び方についても、やはり東アジア出身者の方が早い傾向にあります。受け入れ後の日本語学習に関しても出身国を考慮して評価をしていただきたいです。

 

なぜ外国人材に日本語学習の機会を提供する必要があるの 

外国人材の入社後、日本人と仕事をする中で日本語レベルは上がっていくとはいえ、日本語を学ぶ機会を提供するのは重要です。アンケートによると半数以上が「企業から日本語学習の機会を与えられている」と回答しており、その約7割が「仕事および生活に役に立った」と評価しています。

特に推奨したいのは、入社前の日本語教育の提供です。
内定を出してから入社するまでに数カ月〜1年ほど期間が空いてしまうこと、さらに物理的な距離もあって内定者の様子を把握するのが難しいことを考えれば、内定者と接点を持つ意味でも日本語授業の提供は有効です。日本語を学ぶことが内定者の安心感につながるのはもちろん、企業にとっても外国人材のオンボーディングや定着に関して、事前に唯一対策を打てるのが言語なのです。 

実際にアンケート回答者からは、「日本語ができると周りの人に質問がしやすくなり、仕事だけでなく生活にも慣れやすいと思う」「上司の指示を適切に聞き取り理解できないと迷惑がかかってしまうと感じる」といった声があり、日本語力が入社後の立ち上がりに影響することが見て取れます。 

また、「事前に求められる日本語レベルを知っておきたかった」というニーズも多く寄せられました。外国人材にとっても、必要とされる日本語力を踏まえた上で、そこに向けて準備をしたい思いがあるのです。 

 

他に以下のような回答も見られました。社内用語や自社独自のカルチャー、会社の所在地によっては方言に親しむ意味で、人事担当者やチームメンバーと会話をする機会を設けるのも効果的でしょう。 


最後に回答者の勤務環境についてですが、約半数が「日本語のみの環境」と回答しています。
裏を返せば、すでに外国人材採用を行なっている企業であっても、その約半数は日本語のみの環境で外国人材と仕事をしているのです。
 

外国人材採用を検討する際に言葉の壁を懸念する企業は多いですが、実際に外国人材を採用した企業の約半数が日本語だけで仕事をしている事実を踏まえれば、それほど言語の違いに臆することはないのではないでしょうか。
面接での日本語力の確認と、採用後の日本語学習のサポートによって日本語力の問題はクリアできるのです。
 

 


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