ハラル(ハラール)とは?食べられないものなど、知っておきたいポイントを解説!
普段の生活で、食べ物や飲み物を友人や同僚に何気なくシェアする事があると思います。しかし、宗教上の理由で食べることだけでなく、触れることも許されない食材や飲み物が身近に存在しているのを知っていますか。外国人社員が職場にいる場合「ハラル」について、最低限理解しておくとコミュニケーションも円滑になるでしょう。
この記事では、イスラムの教えに合った食品や食事「ハラルフード」についてや、イスラム法上で許されていない(非合法)とされることについて等、基礎的な内容を解説します。
イスラム教徒・ムスリムとは
国土交通省が公開する「ムスリムおもてなしガイドブック基礎知識編」によると、ムスリムとは
「世界三大宗教の一つであるイスラーム(イスラム教)を信仰している人々のことをムスリムといいます。イスラームには生活習慣に関する様々な教えがあり、ムスリムはその教えに基づいて生活しています。そのため、ムスリム旅行者を受け入れる際には、ムスリムの生活習慣への配慮が必要となります。」
と明記されています。 ※国土交通省「ムスリムおもてなしガイドブック基礎知識編」から引用
イスラム教を信仰するムスリムは、世界人口の約1/4を占めており、国別のイスラム教徒人口はインドネシアが世界第1位、約2億3000万人と非常に多いことが分かります。
ハラル(ハラール)とは
ハラルとは、イスラム法上で「許されている(合法)」を意味するアラビア語で、イスラム教の神「アッラー」に許されているかどうかの指標です。一般的なハラルフードは、「口にすることを許されている食べ物」という意味になります。
そして、食べ物だけでなく服装や行動、行為などにもハラルが関わってきます。ムスリムにとって、生活すべてにおいてハラルかどうかが重要とされています。
ハラルの特徴
ハラルは、基本的に世俗法(※)ではなく、宗教上の規定になります。 何がハラルに該当するかを決めるのは、イスラム教の神のみであるとされているため、ハラルの規定が成文化されていません。
そして、世俗法でないためハラルの規律違反が行われた場合、執行するのは宗教機関になります。しかし、イスラム教を国教とする国では、ハラルの規定を法律に引用する事があるため、場合によって法律としての効力を持つ事があります。 この規定は、国や地域によって詳細が異なります。
(※世俗法とは、非宗教的な権威によって制定される法のこと)
対義語の「ハラム」とは
神に許されているもの・ことである「ハラル」と対義語となるのが、「ハラム」です。意味はそのままで、イスラム法上で「許されていない(非合法)」を表します。 有名なのが、「女性の肌露出」、「アルコール飲料」、「豚肉」などです。
女性は、近親者以外の目に留まらないようにしなければいけないため、顔と手以外を隠し、露出の多い服を着ないことなどが規範とされています。 食べ物の場合、アルコールや豚肉を使った料理を食べることは禁忌とされています。
●なぜハラムになるのか
豚、アルコール飲料、女性の肌露出がハラムに該当すると書きましたが、なぜハラムとなってしまうのでしょうか。
その理由が、豚やアルコール飲料は不浄なもの。そして、女性は「か弱く美しい」と教えられるからです。
イスラム教では、「人間は意志の弱いもの」とされています。魅力的な女性を見ると、理性をなくしてしまう男性が出てきます。そんな男性から身を守るため、公の場で肌や髪の毛の露出がない服装をしなければならないのです。
続いて、不浄なものとして定められているのが
- 豚や犬に関わるもの(唾液、毛、皮膚、排便等)
- 人や動物の糞尿、血、膿み、嘔吐、糞便、豚と犬の精子、卵子
- 死肉、ハラールな動物でもイスラム法に則って飼育・屠殺されていない動物
- アルコール飲料を含む食品、または飲料
です。
後述しますがハラル・ハラムについては、国・地域、個人や宗派によって厳格度や解釈に違いがあります。そのため、例えば食事について、それを食べるかどうかは、最終的には本人が判断をしますが、ムスリムと関わる事があれば、ハラルかどうかを含め相手を配慮することが大切と言えるでしょう。
ハラル認証について
ハラル、ハラムについて触れてきましたが、ここからはハラル認証について紹介します。
ハラル認証とは
一般社団法人ハラル・ジャパン協会が公開している情報によると、
「ハラル(ハラール)認証とは、宗教と食品衛生の専門家(ハラル認証機関)がハラルかどうかの検査をしてハラル性を保証する制度です。ハラル認証機関でその製品がハラルであると認められれば、そのハラル認証機関のマークが製品に与えられます。」
と、紹介されています。 ※一般社団法人ハラル・ジャパン協会「ハラル認証について」より引用
ハラル認証は、1960年頃にマレーシアで始まりました。そして現在ハラル認証機関は、世界に300以上あると言われています。認証時の基準は統一されていないため、認証機関によって判断が異なります。
※JAKIMのハラル認証マーク
ハラル認証マーク
ハラル認証マークがある製品は、ハラムに該当する食材や成分が一切含まれていない事を証明します。 また、製品の生産過程や品質なども、イスラム法に準じているものでないと認証を受ける事ができないため、ハラル認証マークがあれば、ムスリムも安心して購買する事ができます。
イスラム教で豚は、不浄なものとされているため、体内に含むことは禁忌とされています。これは、肉やラードだけでなく、豚肉を保管した冷蔵庫にある食材や豚を配合した餌を食べた家畜、豚を調理した事がある道具で作った料理、豚由来の成分を含む医薬品(ゼラチン・コラーゲン・乳化剤など)も該当します。
日本の場合、ムスリムのために食材を分けて保管する飲食店は、ごく稀でしょう。そのため、ムスリムが観光にきても気軽に入店することは難しいです。 このハラル認証があれば、ムスリムも安心して食事やお土産の購入を楽しめるでしょう。
ハラルフード
前述していますが、ハラルフードとは食べることを許された食べ物を指します。
主にハラル該当する食品は、
- 野菜
- 穀物
- 果実
- 豆類
- 魚介類
- 牛乳
- 卵
(生産過程で豚やアルコールを含む、餌や肥料を与えていないもの)
などがあります。
また、ハラル認定を受けたグルメはハラルフードに該当します。 ちなみに、ムスリムは牛肉や鶏肉、羊肉なども食べる事ができますが、ハラルに則って飼育し、捌いたもの以外はハラムに該当します。
ハラルアプリ
日本で暮らすムスリム向けに、レストランや食事に関する情報のアプリもあるので、この記事では2つのアプリをご紹介します。
●Halal Gourmet Japan
(特徴)600件を超える日本最大級のハラールレストラン情報からお店を検索可能。
また、カメラでコンビニやスーパーの商品棚を撮影するだけで、ムスリムフレンドリー商品かどうかが一目で分かる仕組み。詳細はこちらから。
●Halal Check
(特徴)製品に含まれる隠れた助剤や添加剤を調べることができるアプリです。詳細はこちらから。
周りにいる人はどう配慮すべきか
このように、ハラムについて知ると、イスラム教徒(ムスリム)の周りにいる人々は”どの程度配慮をすべきか?”悩む場面もあるかと思います。
ただ、これだけの多くの人口、そして広い地域に広がる宗教なため、国や地域によって信仰の方法や考え方が大きく異なるのも事実です。”同じ国出身ならイスラム教に対して同じ考え方や行動をとる”ということでもなく、家庭環境や本人の考えもあるのです。
そのため「イスラム教徒だから」「この習慣を厳守しなくてはいけない」と決めつけるのではなく、イスラム教の基礎知識を知り、本人とのコミュニケーションを通じて相手を理解する姿勢が重要と言えるでしょう。
まとめ
今回は「ハラル」について紹介しましたが、宗教によって、生活の習慣や考え方、物に対する価値観が異なります。
イスラム教徒の社員を受け入れる際に企業として対応したいことについては、こちらの記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
ASIA to JAPANでは、アジア各国のトップ大学の学生の採用を支援しております。外国人社員の受け入れについてもお気軽にご相談ください。