【セミナーレポート】北京大学キャリアセンター来日!
ASIA to JAPANは、北京大学の教育指導センターの副主任を招きトークセッションを8月26日に開催しました。
世界の国内総生産(GDP)で世界第2位にランクインする中国ですが、就職に関する考え方がコロナ禍前後で変化が起きていることをご存知でしょうか。
今回のセミナーでは、イギリスの大学評価機関であるクアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds、以下:QS)が先日公開した「QS世界大学ランキング2025」で、中国トップに選ばれた北京大学に通う学生の就職に関するデータ分析を基に就職市場の変化についてお話ししました。
この記事では内容の一部を抜粋してご紹介します。
■セミナー
●トークテーマ
2013年・コロナ直前2019年・そして2023年の北京大生の就職に関するデータ分析
●登壇者
北京大学 就職指導センター 副主任
株式会社ASIA to JAPAN(以下:ASIA to JAPAN)
代表取締役社長 三瓶 雅人
■北京大学とは
・中国の特色を持つ世界一流大学
副主任:2024年現在までの中国国内の大学は3,117校になります。北京大学は1898年に中国近現代において初めての国立総合大学として創立されました。中国では大学を評価する様々な基準が設けられているのですが、全てにおいてトップレベルで評価されています。中でも近年始まった中国全土で36校のみが選ばれた「双一流(世界一流大学と世界一流学科を作る)」という基準にも入っています。そして中国国内でトップ2に入る1校となっています。
・中国で最も教員陣が充実している大学
副主任:3,900人の教員が生徒に教えていますが、そのうち1/3は中国の様々な人材プロジェクトに選ばれています。その中には94名の中国科学院院士、30名の中国工程院院士、37名の発展途上国科学院院士が含まれています。
※院子(いんし):傑出した成果を挙げた研究者・技術者に付与される称号
ここ数年北京大学では海外から800名ほどの優秀な人材を招聘しており、そのうち90%が中年や青年の人材です。そのため中国国内でも教員人材が充実した大学とされています。
・北京大学の世界ランキング
副主任:北京大学は過去4年間、ESIやQSなど各世界大学ランキングで上位にランクインしています。特にESIでカバーされている22の学科分野でトップ1%に入る学科があり、その数は中国のだいがで最も多いです。
また中国の教育部では独自基準で国内大学の学科を評価しています。直近の第五回学科評価では、優位な学科の数と割合が国内で最も高いと評価されました。
そして、最初の「双一流」建設リストには中国の大学で最も多い41の学科が選ばれました。これから北京大学は独自に41の一級学科と38の一流学科分のスケジュールで双一流の建設を進めていきます。独自のスケジュールで建設ができるのは、中国教育部から信頼を得ている証でもあります。
現在北京大学では文系、理系、工学、農学、医学など全ての学部が揃っています。
■中国の大学卒業生の就職状況の変化(北京大学を例に)
・2019年と2023年での卒業生の数の変化
副主任:2019年と2023年の学部生および大学院生の卒業生の合計数は、7,808人および9,583人と約1,700人増やせました。この増えた人数の大部分は大学院生が占めており、現在の大学院生は学部生の2倍近くいます。この状況というのは中国のトップ大学であればよく見られます。
海外に留学する人の数はこの4年で減少し、中国国内で進学する人が増えました。なぜ中国では進学を選択する学生が増えているのかというと、「学歴」があると「給与」が30%近く高くなるからです。学部生と修士は企業に就職するケースが多いですが、博士になると研究所などで研究に従事する人が多いです。
・就職率と進学率の変化
副主任:2019年と2023年の全体の就職率を見てみると98%や97%と高い水準を保っています。卒業後すぐに職が見つかるというのは北京大学では当たり前にあるケースです。学部生と大学院生で就職する割合をみると、大学院生の就職数が圧倒的に多く、その理由は学部生の8割近くが進学を希望するためです。学部生の就職率だけを見てみると、2019年は23.9%あった数値が2023年には18.6%まで減少しました。これはトップ大学になればなるほど進学希望者が増加する傾向にあります。
・北京大学学生の職業条件と期待の変化
副主任:学生が企業就職を選ぶ条件ですが、中国の大学生は国営企業や国家機関を選択する傾向にあります。その理由は給与や福利厚生がしっかりとしており、安定した職であるからです。これらの傾向から、今の学生にとってワークライフバランスはとても重要視されていることがわかります。
希望地域で見てみると、中国の発展につれて北京、上海、広州、深センだけではなく、成都や西安といった新しい都市に行く学生の数も増えています。
職種ですが、ITに関する企業は中国の大学として最も良いとされています。IT業以外にもハイレベルな製造業も人気が増えつつあります。
仕事内容では、技術関係や研究開発に関する仕事につきたいと考えている人が多いです。これらの職種や仕事内容は他に比べて給与が高いだけでなく、自分の専攻も活かせる点で注目されています。
近年は企業側も技術関係や研究開発の採用が最も早く行われ、続いて総合型の採用が行われています。
・北京大学の採用市場の変化
副主任:2019年と2023年において、北京大学の学生の就職先となる企業には大きな変化が見られました。2019年で最も多く採用された20社は、通信技術、インターネット、銀行・金融の3つの業界が占めていました。一方の2023年で最も多く採用された 20社は、通信技術、インターネット、銀行に加え、新たに研究機関の4つの業界が占めました。
・北京大学学生の給与の変化
副主任:卒業生全体で正社員登用後の税引前年収の平均を比べると、2019年は19.95万元(約4,025,420.65円)で2023年は24.95万元(約5,038,333.52円)と100万円近く年収が上がりました。理工系やIT、金融、技術系になると100万元(約2,000万円)の年収をもらう学生もいます。
公務員の年収は割と低く中国元で10万元(約200万円)ほどとなっています。
・パンデミック前後での大学生の就職の変化
副主任:パンデミック前後での就職の変化は激しいものとなっています。パンデミック前は対面での面接が普通でしたが、コロナ禍ではオンライン面接がほとんどとなりました。現在はオンライン・オフラインともに行っている企業が増えてきています。
面接では学生の素質や人となりが最も重視されており、いままで重視されてきた学歴はそこまで厳しくなくなりました。
・中国学生採用のタイムライン
副主任:中国の大学卒業生に対して「新卒」が最も重視されており、卒業前年から就職のプロセスが始まります。
2025年に卒業する学生を例としてみると、2024年7月に重要なインターンシップが行われる時期となります。IT企業など多くの企業がインターンシップ中にオファーを出すことが多いです。
中国では「金九銀十」(金の9月、銀の10月)という言葉があり9月になると正式に就職のプロセスに入ります。そして2025年の3月4月にピークを迎えます。その時期になると大半の人がオファーを受けている状態となります。
春になると国家公務員の試験結果や大学院生の進学結果が出るので、様々な学生が就職プロセスに加わります。
もし中国トップ大学の学生採用を考えていましたら、翌年卒業の学生を狙ったスケジュールを前もって立て、早めに行動いただくことをお勧めします。
中等レベルであれば春がピークとなるためスケジュール感は少し異なります。
■北京大学とAsia to Japanの提携の見通しと展望
・北京大学就職センターとAsia to Japanの提携可能な分野
副主任:ASIA to JAPANさんは中国のトップ大学の学生が日本で就職するための大事なチャンネルであり、仲介役としての役割は大きいと考えています。その理由は就職支援の土台がしっかりされており、学生を丁寧にサポートしてくれているからです。
2011年から代表の三瓶さんへの協力を始めて10年以上の長い道を共に歩んできました。今後私たちもASIA to JAPANさんと長期的な協力関係を結んでいきたいと考えています。また、これから中国の他大学との繋がりも強化していきたいと思っています。
この協力関係は大学卒業生の就職のためだけでなく、中国と日本の関係の架け橋であると考えています。
■外国人人材採用について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください
今回のせみなーでは、北京大学を例にあげた中国人学生の就職変化について紹介しました。
トップ大学の学生も安定や福利厚生を求めるようになったなど、昨今の経済の不安定さに鑑みる意見が反映されていました。
一方で中国は現在も就職氷河期と言われるほど優秀な人材でも就職先を探している状況が続いています。実は優秀な大学であっても、地方にあるというだけでなかなかいい話を得られない学生もいることをご存知でしょうか。ASIA to JAPANは、なかなか日本と繋がる機会がない大学へも直接訪問し、学生の日本就職のきっかけづくりを行なっています。
学生の就職支援だけでなく、外国人採用を検討する企業様の採用支援も行っております。学生の採用に興味がある企業様はASIA to JAPANへ気兼ねなくお問い合わせください