海外の大学に進学し、現地で専攻分野と語学、異文化を学ぶ日本人留学生。バイタリティ溢れる優秀な学生たちですが、実は彼ら・彼女らの多くが就職活動に困っていることをご存知でしょうか。
海外から日本の就職活動の様子はなかなか見えず、日本の大学生が当たり前に知っている就職活動の情報やノウハウも分からない。
ASIAtoJAPANは、そんな状況で日本企業への就職を目指す海外大生のリアルな声を聞くべく、座談会を行いました。アメリカとイギリスの大学に通う8人の日本人学生の本音を6回に分けてご紹介します。
アメリカ&イギリスの海外大生の本音1/日本の就活スケジュールがわからない はこちら。
<<プロフィール>>
Aさん(イギリス/King’s College London/国際関係学専攻/3年生)
Bさん(イギリス/University College London/社会学専攻/3年生)
Cさん(アメリカ/UC Berkeley/映画学専攻/4年生)
Dさん(イギリス/University of Birmingham/コンピューターサイエンス専攻/3年生)
Eさん(イギリス/University of Essex/国際関係学専攻/2年生)
Fさん(イギリス/University of Cambridge/エンジニアリング専攻/修士生)
Gさん(アメリカ/Purdue University/ホスピタリティー専攻/卒業見込み)
Hさん(アメリカ/UCLA/コミュニケーション学専攻/4年生)
海外大学の「キャリアオフィサー」とは?
——前回就活スケジュールについてお聞きしましたが、人によって就活に関する情報量にはかなりの差がありそうですね。
A(イギリス/King’s College London):そうですね。だからイギリスでは情報を統一するために、大学を横断したチャットグループのようなものを作ろうかと思っています。
僕はキャリアオフィサーでもあるのですが、チャットグループがあればキャリアオフィサーの負担は減るし、みんなが等しく情報を得られますから。
——キャリアオフィサー?
A(イギリス/King’s College London):大学によって違いはありますが、日本人の海外大生を採用したい日本企業と、日本企業で働きたい海外大生の間をつなぐのが基本的な役割です。
主には海外大生向けの就職イベントや関連情報の告知依頼をエージェントや日本企業から受けて、それを自分の大学の日本人に発信しています。
C(アメリカ/UC Berkeley):中にはエージェントを通さず、直接オンキャンパスのセミナーをやってくれる企業もあるので、そういった企業のイベント開催をサポートすることもありますね。
D(イギリス/University of Birmingham):キャリアオフィサーの有無は大学によります。僕の大学では2022年から僕が担っていますが、大学によってはやりたがる人がおらず、後継者がいないところもあるようです。
A(イギリス/King’s College London):大学によってはインセンティブが付くこともあるんですよ。ボスキャリに行くお金がただになったり。
D(イギリス/University of Birmingham):えー!?
A(イギリス/King’s College London):そういう大学では人気のあるポジションですね。
キャリアオフィサーと接点を持つには?
——各大学のキャリアオフィサーと企業やエージェントは、どのようにコンタクトを取っているのでしょう?
A(イギリス/King’s College London):過去のネットワークを引き継ぐのが基本ですね。こちらから新規開拓をすることはあまりないんじゃないかな。
まれにFacebookページからDMが来ることもありますが、すでにキャリアオフィサーと接点がある人から紹介されて連絡をもらうことがほとんどなので、存在を知らないと接点は持てないと思います。
D(イギリス/University of Birmingham):うちの大学もそんな感じです。新規の連絡のほとんどは卒業生とのつながりで知ったか、FaceboookやLinkedin経由のどちらかですね。
C(アメリカ/UC Berkeley):日本企業同士での情報交換で新たに連絡が来るケースもあるようですね。
A(イギリス/King’s College London):そういう背景もあって、大学を横断したチャットグループを作りたいんですよ。キャリアオフィサーがいない大学は情報が入らないし、海外大生の採用をしたことがない日本企業にとって障壁が高いじゃないですか。
——そこでも大学によって情報格差が生じてしまうのですね。
A(イギリス/King’s College London):もったいないですよね。正直、世界大学ランキングの上位校も、そうでない大学も、そこに通っている日本人の質はそれほど変わらないと思うんですよ。
日本企業からしたら海外大学に進学したバイタリティや異文化で揉まれた経験、語学力が欲しいのだと思いますが、それは海外大生であればほとんどの人が持っています。
有名大学に情報が集中してしまっている現状は大きな機会損失なんじゃないかな。
C(アメリカ/UC Berkeley):むしろ日本人がいない大学の方が英語を話す機会は多いです。英語が堪能な人材が欲しいのであれば、小さい大学の方がネイティブ級の人材が採用できる可能性は高いと思いますね。
A(イギリス/King’s College London):KCLもUCLも、日本人とばかり遊んでいる人はいっぱいいますからね。ロンドン自体、日本人が多いですし。
留学先で日本人と距離を置きたい海外大生のジレンマ
——日本人コミュニティから離れ、現地でのコミュニケーションを頑張っている人ほど、日本の就活情報との接点は少ないと。
A(イギリス/King’s College London):そういう人たちが日本企業を志望しているかはわからないですけどね。日本の就職情報を知りたいと思ったら日本人コミュニティに入ればいいわけで、そうしない時点で現地就職を希望している可能性が高い気がします。
ただ、僕もそうですが、最初の1〜2年目はがっつり現地コミュニティに入り、2〜3年目に日本人コミュニティを覗くパターンは結構あって。そこで日本で就職する選択肢があることに気付くケースは多いと思います。僕も最初は現地就職派でしたしね。
C(アメリカ/UC Berkeley):僕はアメリカに来て最初の2年間は日本人コミュニティに入っていなかったので、就活の情報が本当に入って来ませんでした。そもそも就活を意識する余裕もないし、ボスキャリすら知らなかったくらいで。
だからトランスファー(編入)先で初めて日本人コミュニティに入り、「ボスキャリで内定を取らないとまずいよ」と言われてだいぶ焦りました。その時すでにボスキャリ開催1カ月前でしたから。
A(イギリス/King’s College London):外国人とガンガン接した方が成長できるけど、そっちに偏ると就活情報が入ってこない。かといって日本人コミュニティにいると留学した意味が減る。そこのバランスは結構ジレンマがありますよね。
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