EN

知って安心、外国人採用の手続きガイド!~採用時・入社前・入社後のステップに分けてご紹介~

目次

知って安心、外国人採用の手続きガイド!~採用時・入社前・入社後のステップに分けてご紹介~

外国人材の採用を検討する企業が、年々増加傾向にあるのはご存知でしょうか?

本記事では、外国籍人材雇用の法務・労務の第一人者である杉田昌平弁護士にご協力いただき、採用時に行うべき確認や、入社前後での具体的な手続きについてご紹介します。

※高度人材とは
「高度人材」や「高度外国人材」という名前の在留資格があるわけではありませんが、「専門的・技術的分野」と呼ばれる在留資格で働く人の事を意味する事が多いです。この記事では、在留資格「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務」で働く外国人材を、高度人材と定義しています。

(関連記事:日本経済の救世主?国際的な視点と専門性を兼ね備えた高度外国人材とは?

【採用時】外国人採用を行う前の確認事項

まず前提として、外国人を採用する際に必ず注意しなくてはいけないのが「在留資格」です。
在留資格の理解が、なぜ重要なのかについて紹介します。

在留資格の内容

在留資格の内容で重要なのが、「当該人材が、社内で担当する業務を行い得る在留資格を取得できるか」という点です。

日本の在留資格は、2023年3月時点において29 種類の在留資格が存在しますが、今回ご紹介する「高度外国人材」は、前述のとおり「高度専門職」、「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格で働く人材のことを指しています。

高度人材に内定を出す際は、該当者が在留資格を得ることができるか確認する必要があります。

●注意が必要なケース

留学生など、既に日本にいる外国人材を採用する際は、要注意です。

海外から日本の大学へ学びに来る留学生は、在留資格「留学」に該当しますが、ここに該当する外国人は、「原則就労不可」のグループに属するため、原則として就労を行うことができないのが特徴です
そのため、卒業後に企業へ就職をする際には在留資格の変更を行う必要があるのため注意が必要です。

※留学生を採用する際の注意事項について、過去に掲載した記事で詳しく触れていますので、こちらをご覧ください。

在留カードの確認

続いて在留カードの確認です。

企業が国内にいる外国人材を採用する場合、所有する在留カードで適法に報酬を得る活動ができるかどうか、確認する必要があります。
もし、条件に当てはまらない外国人材を採用してしまうと、採用し就労させた企業に対して、不法就労助長罪が適応されるリスクがあります。

また、最悪の場合、偽造された在留カードを所持して就労するケースもあります。もちろん、正式な在留カードでは無いため、雇用してはいけません。
しかし、在留カードが偽造されているか、判断する方法がわからない方がほとんどだと思います。
在留カードを確認する場合は、次の2点のチェックを行いましょう。

●チェック項目①:過去に失効した在留カードをもとに作成されていないか?

法務省の「在留カード等番号失効情報照会」で確認することで、偽造された在留カードであるかチェックすることが可能です。

●チェック項目②:ホログラムが偽造された物ではないか?

こちらは、人力になりますが、在留カードの原本を十分にチェックする必要があります。

【入社前】会社として必要な手続き

では、ここから高度外国人材の受け入れにあたり、関連する手続きについて紹介します。
まずは、入社前に必要となる手続きについてです。ここでは、主に2つの手続きが必要となります。

・「労働条件の明示」、「雇用契約の締結」
・在留資格のための手続

それぞれの内容について、詳しく説明します。

①「労働条件の明示」、「雇用契約の締結」

労働契約の期間や賃金といった、労働条件に係る事項を記載した書類「労働条件通知書」を作成し、明示する必要があります。
そして、労働条件通知書を確認した上で、雇用主と労働者が互いに合意したことを証明するために「雇用契約書」を作成し、契約を結びます。

明示事項

採用にあたり労働者に対して労働条件を明示する必要があります。
明示を必要とする労働条件は労基則5条1項各号に定められていますので紹介します。

※厚生労働省「労働基準法施行規則」を元に作成

 

明示方法

1号から4号までの事項については、雇用側が採用する外国人材に対し、原則として書面を交付して明示する必要があります。
労働者からの希望がある場合は、FAXや電子メール(E-mail、SMS、SNSの個別メッセージ)等の方法で書面の明示を行うことも可能です。
ただし、直接明示しない場合は、対象者自身が個別に書面を出力して、保存するよう伝えるのが望ましいとされています。

また、外国人材に対して労働条件を明示する場合は、母国語や平易な日本語を用いる等、当該外国人材が理解できる方法で明示するとよいでしょう。
対象者の言語レベルにもよりますが、認識・理解にズレが生じてしまうと、後々トラブルに発展してしまうことがあります。
双方が安心して働くことができるように、この点の気配りは大切です。

厚生労働省のウェブサイトでは、「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」として英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、インドネシア語、及びベトナム語の書式が公開されています。

 

②在留資格のための手続き

続いて、採用した外国人材が働くのに必要な「在留資格」を得るための手続を行います。
外国人材を採用する際、その人材が「国内」にいるかどうかで、手続き方法が変わるので注意が必要です。

●海外にいる外国人材を採用する場合

自社を管轄する地方出入国在留管理局、又は出張所に在留資格認定証明書交付申請書を提出して手続きを行います。

●既に日本にいる外国人材を採用する場合

外国人材の住所地を管轄する地方出入国在留管理局又は出張所に在留資格変更許可申請を提出して手続きを行います。

 

【入社後】会社として必要な手続き

続いて、外国人材が入社した後に必要な手続きを紹介します。

・外国人材が届出するもの
・受入れ企業が届出するもの

入社後の場合、企業だけでなく雇用された外国人材も、それぞれ届出を行う必要があります。

①外国人材が届出するもの

外国人材が行う届出には、以下の5種類があります。その中から該当するものを、定められた期日内に届け出る必要があります。

これらの届出は、企業側が外国人材に必要な手続を示し、必要に応じて窓口に同行する等の対応を行うことで、届出漏れなどのリスクを減らし、外国人材に安心して就労してもらうことができます。

②受入企業が届出するもの

受入企業(または所属機関)が行う必要がある届出は、「外国人雇用状況届出」です。

外国人雇用状況届出とは、国が各事業所で働く外国人材の雇用状況を把握することが目的とされています。また、状況を把握することで、外国人材の雇用安定と改善や再就職支援など、必要な動きを取れるようにしています。

※この届出は、一部対象外となるケースもあるので要注意です。対象外となるのは、「特別永住者」または在留資格「外交」「公用」の方です。
特別永住者は、今回の対象外となりますが、“通常”の永住者は対象となるため届出を行う必要があります。
届出は、被保険者か否かで提出するものが変わります。

●外国人材が被保険者である場合

当該外国人材が被保険者である場合、厚生労働省では必要な手続きについて次のように定めています。

雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)又は雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったこととなります。届出期限は、雇用保険被保険者資格取得届又は雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限と同様です(雇入れの場合は翌月10日までに、離職の場合は翌日から起算して10日以内)。

※厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」より引用

上記にあるように、被保険者であった場合「雇用保険被保険者資格取得届」、もしくは「雇用保険被保険者資格喪失届」を届け出る必要があります。

●外国人材が被保険者ではない場合

当該外国人材が被保険者ではない場合、厚生労働省では必要な手続きについて次のように定めています。

外国人雇用状況届出書(様式第3号)を提出してください。届出期限は、雇入れ、離職の場合ともに翌月末日までです。

※厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」より引用

被保険者でない場合は、外国人雇用状況届出書を期日までに届け出る必要があります。

●その他:雇用保険について

外国人材についても、雇用保険法上及び厚生年金保険法の被保険者となります。
日本年金機構は、健康保険・厚生年金保険(社会保険)の制度について、以下のように述べています。

健康保険・厚生年金保険に加入している会社、工場等の適用事業所に常時使用される方は、国籍や性別、賃金の額等に関係なく、被保険者となります。(原則として70歳以上の方は健康保険のみの加入となります)

※日本年金機構「外国人従業員を雇用したときの手続き」より引用

上記のとおり、対象となる企業は、外国人材であっても厚生年金保険の加入を行う必要があります。

 

まとめ

外国人材採用の際に必要な手続きについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。今回は、高度外国人材を雇用する際に必要な手続きについてでしたが、雇用する外国人材によって関わる手続きは変わってきます。そのため、外国人材の採用を検討している方は、何が対象となるのかしっかりと確認をしましょう。

ASIA to JAPANは、外国人材の採用を専門としています。外国人材採用で不安なことがありましたら、気兼ねなくお問い合わせください。

 

●記事執筆のご協力

弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)

杉田昌平

この記事をシェアする!