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外国人材が働きやすい会社とは

目次

外国人材を採用するためには、外国人材から選ばれる必要がある。そのためには「外国人材が働きやすい会社」について知ることが重要だ。外国人材が働きやすい環境を整え、外国人社員の満足度を上げることができれば、定着率が向上するだけでなく、今後の採用時の集客が格段に楽になる。ロールモデルとなる先輩社員がいることでキャリアや働き方がイメージしやすいのはもちろん、既存の外国人社員から自社の評判を聞いた友人や大学の後輩が集まりやすくなり、芋づる式に採用できることも。外国人材は日本人よりも給与やキャリアに関して赤裸々に語る人が多く、近況報告と同じような感覚で給与について話すことも珍しくない。情報が筒抜けになりやすい分、良い情報も悪い情報も広まりやすいことは理解しておこう。

外国人材にとって働きやすい環境

海外から新卒採用を行う際の受入れ体制外国人材にとって働きやすい環境について以下に挙げたが、これらは“Must”ではない。全ては“Want”であり、つまりは「できると好ましい」ことだ。自社で取り組めそうなことから、できる範囲で行ってほしい。

同じ職場や職種に複数人の外国人材を配置する

学生から社会人という立場の変化、母国から日本というロケーションの変化、母国語から日本語という言語の変化、日本で働く外国人材には一気に3つの変化が生じる。新しい環境にうまく適応できないことで生じる精神的な不調を五月病と称すが、外国人材にはそれが3倍になって襲ってくるわけだ。そんな中で自身が何に対して適応できていないのかが判断できないと、「会社が悪いのでは?」という思考に陥ってしまいがち。

だが、職場に外国人材が複数いれば、みんなが違和感を感じていることなのか、自分だけの問題なのか、比べたり話し合ったりすることで自分の状態を整理できる。同じ立場で不安や悩み、困りごとを共有できる相手がいることの意味は大きい。出身国は違っても構わないので、できるだけ同じ職場に複数人の外国人材を配置したい。同時期の入社、同じ職種であれば理想的だ。

ラフな面談を定期的に行う

入社初日、1週間後、1カ月後、3カ月後、それ以降は3カ月ごとを目安に面談を実施できるといい。仕事や職場環境、日本語、食事、日本での生活など、テーマごとに「困っていることはないか」という視点で話を聞こう。その際、会議室などのかしこまった場ではなく、ランチやお茶などの話しやすい場をセッティングすることをお勧めする。上司ではなく、人事やメンターがラフに行うのもポイント。自分を評価する立場の上司を相手になかなか本音は話しにくいものだ。

外国人材の言動を頭ごなしに非難しない

これまでも何度か“就社”と“就職”の違いについて触れてきたが、この感覚の違いは入社後のトラブルにもつながりやすい。日本では“就社”の考えのもと、「会社を成長させるためにみんなで頑張ろう」という感覚が強い。一方、海外ではあくまで“就職”であり、「会社の成長は経営が考えることで、自分は自分の仕事をやる」という意識で働いている人が多い。そのため同じ部署の人が忙しかったとしても、「自分の仕事が終わったら定時に帰る」のが一般的だ。

日本人と外国人材の双方がこの感覚の違いを理解することが必要だ。「他の人を手伝わずに帰る=駄目な人」ではなく、そもそもそういう価値観を持ち合わせていないことを日本人は知るべきであり、外国人材も日本で働くからには、ある程度日本の慣習に合わせる努力をすべきだろう。手で食事をする国の人に対して「手で食べるなんて」と非難しても意味がない。日本では箸を使って食事をすることを伝え、箸の使い方を教えればいいだけの話だ。外国人材の言動を頭ごなしに非難するのではなく、文化や価値観の違いを踏まえた上で日本のやり方や習慣を建設的に伝えていこう。

評価基準やキャリアパスを明確に伝える

評価やキャリアに関して、海外では明確に説明があるのが一般的だ。どういう行動が評価されるのか、逆に何をしたら評価が下がるのか、キャリアパスはどうなっているのか。こういった説明がないことから先の姿をイメージできず、離職につながってしまうことは少なくない。特にロールモデルとなる先輩の外国人社員がいない場合は要注意。海外とのギャップを理解し、上司からきちんと伝えることが重要だ。

総合職の場合はどうしてもキャリアパスが見えにくいが、たとえ先々のキャリアパスを明確に示すのが難しかったとしても、現在の配属の目的や大まかな在籍期間など、できる限り伝えたい。似た経歴の社員のこれまでのキャリアパスを例として見せるのも有効だ。自分の希望や専攻とは異なる部署に配属されても、日本人であれば数年で異動になるだろうと理解できるが、外国人材に暗黙の了解は通用しない。いつか異動になると言われても、それが何年後なのかが全くイメージできずに不安に感じてしまう。

宗教に配慮した環境を整える

外国人材の人数が増えてきたら、専用のプレイヤールーム(礼拝室)やハラールフードなどの社食メニューを用意したい。ただ、最初から整備する必要はなく、人数が少ないうちは個別対応で十分だ。その際に留意すべきは、信仰の度合いややり方は人それぞれ異なるということ。宗教によっては食事に制限があったりお祈りの時間があったりするが、厳密に規律を守る人がいる一方で、日本で生活する中で緩やかになる人もいる。お祈りについても隔離された部屋で行いたい人もいれば、カーテンで仕切られていればいいという人もいる。自社の外国人材がどのような環境を望んでいるのかを聞いた上で、できる範囲で環境を整えよう。

日本特有の雇用制度が壁になることを知る

オフィスにいる社員外国人材が10年、20年と長期的に働いていく上で、年功序列や定年を前提とした給与制度など、日本特有の雇用制度が壁になる。日本では終身雇用と年功序列のシステムのもと、年齢を重ねるにつれて給与が上がっていくのが一般的だが、外国人材は“時価”で評価されることを望んでいる。遠い将来母国に帰る可能性も高い中で、数十年後に給与が上がるという考え方はなかなか通用しない。

また、アジアのほとんどの国では管理職の数が日本に比べて少なく、その分需要が高い。日本で管理職に就いた外国人材が国に戻ると、現地の物価で日本と同じ程度の給料がもらえるようになり、むしろ日本よりも待遇が良くなる。つまり管理職になった瞬間に日本の給与水準はアジア各国の水準を上回れなくなり、「母国よりも給与が良いから日本で働く」という動機がなくなってしまうわけだ。

外国人材を受け入れていく上で日本特有の雇用制度を見直すことが望ましいのは確かだが、現実問題としてそう簡単にどうにかできることではない。各国との違いをまずは理解し、事前理解を求めたり、“お金以外”の価値に目を向けたりすることが大切だろう。最新技術に携われる、日本の技術や仕事の仕方を学べる、良い職場環境があるなど、給与以外の面での満足度を上げることを目指したい。


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